2000.07.30-07.31

梅雨明け直後の7/30〜7/31で東北の鳥海山(山形、秋田)に行って来た。

この山を初めて見たのは15年前である。仕事で初めての東北出張で上野発の夜行列車で秋田に向かう途中、夜明けを迎えふと外を見ると秀麗な曲線の大きな山が目に飛び込んできた。まだ3月であったのでその山は雪で真っ白であった。裾野の大きな山で非常に長い時間車窓から見えていた。こんなに広い範囲から見える山は国内では富士山位しかない。こんな山が事前に何の予備知識もなく目に飛び込んできたのである。気にならないわけがない。以来私の脳裏にこの時の姿が焼き付いてしまった。

この山は活火山であり、昔から火を噴く荒ぶる神の山(大物忌の神)として地元の人々に崇められてきた様である。所謂信仰の山である。山麓や山頂近くにある大物忌神社、この中央では聞き慣れない名前が遠くの山に来たと言う印象を一層強くする。尾瀬の燧ヶ岳に次いで東北第二位の標高とあるが私はこの山こそが東北第一だと思っている。日本アルプスの様に写真が豊富でもなく情報も少ないので一層期待が高まる。行ってみたら期待以上の素晴らしい山であった。

7/29(移動日)
朝、長野の自宅を出発。豊科インターから北上。長野道−上信越道−北陸道を経て新潟市まで3時間。ここから一般国道(7号線)更に北上。初めてみる景色が続くのであまり長く感じない。海岸線に沿って昼頃、村上市を通過。ここから一端山に入り、新潟、山形県境付近で再び海へ・・・
鶴岡市に入ると海岸線の彼方に大きな裾野が見えた!自宅から7時間、遂に鳥海山が見えて感激する。鶴岡市に続き酒田市を通過する。国道はバイパスになっており渋滞も少なく両市を通過する。両市とも大きい街だ。遊佐町に入ると海水浴客が多い。登山口に向かう前に温泉に入る。(あぼん西浜¥350))
登山口の鉾立には昔有料道路だったらしいが今は無料の鳥海ブルーラインを上がる。標高0mから1200mまで。海を見ながらの山岳観光道路。標高が上がると共に気温も下がり快適になってくる。鉾立駐車場はかなり大きい。
駐車してある車のナンバーは全国的でありこの山の人気を物語っている。
ここで埼玉から来た高校時代からの山の友人E氏と待ち合わせ。
それから地元山形の人で山のメーリングリストで知り合ったSBさんが登山口から50M上がった東雲荘に来ているので挨拶に行く。SBさんには事前に鳥海山、その他の情報を色々教えて頂きお世話になった。メールではやりとりしていたが初対面である(*^_^*)最初はなかなか言葉が出ず無愛想に思われたかもしれない(^^;)SBさんとそのお友達の秋田のSさんにとっておきのコースを教えていただいた。鉾立から鳥海湖に行くと道が分かれていて選択に悩んでいたのだが特に花が多いルートを教えてもらった。結果大正解で初の鳥海山登山を存分に楽しむことが出来た。

鉾立駐車場

鉾立展望台から見た白糸の滝
SBさんには鳥海山の他の季節の写真も見せていただき、この山の魅力を多く知ることができた。
やはり山形、秋田の人々にとってこの山は特別な存在の様だ。夕暮れ時にはSBさん、S氏、E氏と共に登山口から10分ほどの展望台に日本海に沈む夕陽を見に行った。この日は雲が多く日没は見ることができなかったが、かなり遠くを見渡すことが出来た。南西の水平線の彼方には何と佐渡島が見えるではなないか!北に目を向けると男鹿半島が霞んでいる。その奥は白神山地か?
条件がいいと北海道の山までも見ることができるそうだ。展望台の東側は目もくらむ様な深い谷の奈曽渓谷、谷の反対側の岩壁には一筋の滝が落ちている。
白糸の滝は雪解けが進む昼の間は水量が多いのだそうだ。翌朝には滝の音も静かでとても同じ滝とは思えなかった。日没後には海に浮かぶ漁り火と夜景が美しかった。この日は車の横にテントを張り寝ることにした。
7/30
日の出を見送りに来ていただいたSBさんと共に迎え、海に投影された影鳥海を見る。ここでSBさんとはお別れし、いよいよ登山開始。SBさんありがとうございました。
ここは登山口付近で1200M位であるが既に森林限界近くで樹の丈は低く展望が良く爽快な山歩きが楽しめる。良く整備された道を40分ほど上がるともう最初の雪渓が現れた。冷たい水も流れている。

鳥海山象潟口(鉾立)
最初の雪渓から約10分の登りで賽の河原。ここからSBさんに教えてもらった道を行く。多くの人は直接御浜方面に行くのであるが我々は少し回り道をしてみた。ニッコウキスゲやチングルマの花が多く素晴らしい・・・
二週間前はニッコウキスゲが見事だったようだ

河原宿付近のチングルマ

2週間前の見事なニッコウキスゲ
(愛宕坂付近)Sさん提供
盛りを過ぎたとは言えまだまだニッコウキスゲが多い。愛宕坂を登り切ると御浜である。ここには御浜小屋があり絶好の休憩ポイントである。ここで標高約1700M。小屋を横切ると眼下に蒼い鳥海湖(鳥の海)が見える。雪がまだかなり残っている。
河原宿付近を行く

鳥海湖
周辺は草原状になっていて、ニッコウキスゲをはじめ色々な花が風に揺れている。実に気持ちいい所。ここから扇子森を経て御田ケ原分岐までは傾斜も緩く草原状の所を歩く稜線散歩を楽しめる。ただ行く手にはこれから行く荒々しい七高山、新山が大きくなってきている。

扇子森

御田ガ原
御田ケ原分岐から七五三掛(しめかけ)にかけてだんだん傾斜がきつくなってくる。七五三掛周辺はハクサンイチゲが見事である。ここから外輪山経由で七高山へ向かう。傾斜も急で重い荷物では辛いところ。小さなピークをいくつも超える。文殊岳、伏拝岳、行者岳・・・
左下の雪渓(千蛇谷)を見ると登山者が豆粒の様に見える。

扇子森から見た新山(左)と外輪山(七高山)

七五三掛(しめかけ)から外輪山を目指す

外輪山の登りから千蛇谷、新山(左)七高山(中央)

文殊岳

千蛇谷を登る登山者

七高山山頂
稜線は地元の日帰りの人で賑わっている。
全国から集まる遠くの人は上の小屋で泊まる様だ。

そして何故かトンボの大群である。
ものすごい数であまりの密度でお互いにぶつかり合っている。人間には当たらないから不思議だ。
どこから来たのであろうか・・・??
七高山は標高2230m。新山より6m低いだけだ。
火山なので岩はもろく崩れやすそうである。ここから小屋(大物忌神社)まではすぐ。しかし外輪山からの下りはガラガラの急斜面で崩れやすい。落石を起こさない様に慎重に下る。
下り着くとかなり分厚そうな雪渓があり、水を補給する。
と言っても水が流れ出している訳ではないので、雪を掘り、しみ出してくる水を水筒に少しずつ入れる気の長い作業だ。

大物忌神社近くの水場

大物忌神社・御室
水場から大物忌神社御室までは10分ほど。足下を見ると先ほどとは地質が違う。明らかに外輪山のそれとは違い火山灰状で粒子が細かい。いや火山灰そのものだろう。一歩一歩進むたびに土煙が上がる。これは昭和49年の噴火による物であろうか。新山は雲仙や有珠山と同じ溶岩ドームで享和元年(1801年)の噴火で形成されたとある。この山は麓から見上げると秀麗で美しいが山に入ってみるとその全く違った貌に驚かされる。中腹の優しいお花畑とは打って変わって山頂付近の荒々しい地形、長大な千蛇谷の雪渓など実に変化に富んいる。御室は一応山小屋の形式をとっているが神社である。受付の人達は白装束である。

御室で一休みしてから日没を見に新山に登ってみた。御室から巨岩の積み重なったルートをペンキマークに注意しながら三点確保で登る。御室からは30分。山頂付近はいくつもの岩峰に分かれていて登り下りがある。山頂手前で一端岩峰に登った後、深い割れ目を下降する。
割れ目の底は暗く不気味である。

新山山頂直下の割れ目

新山山頂
割れ目を抜けると山頂はすぐである。山頂からは日本海に沈もうとしている太陽と輝く海が美しい。こんな高い山からすぐ近くに海を見られるのも珍しい。
新山から日没の写真を撮る。
東側を見ると出羽丘陵に「影鳥海」が投影されている。
日没後は海岸線付近の夜景と漁り火、星が美しい。

7/31
朝一番に朝食前に日の出と影鳥海を見に再び新山に取り付く。朝は遮るものがない完璧な状態の影鳥海を見ることができた。南には遠く月山が望める。

朝の影鳥海

月山

千蛇谷を下る
御室で朝食を済ませ、7:00頃出発。下りは千蛇谷を行ってみた。最初は新山の草付きの斜面をジグザグに下る。花も多い。この緑の多さは昭和49年に噴火があったとは思えない。急斜面を下りきった所から雪渓の下りであるが傾斜がそれほど急ではなく楽であった。しかし大きな石がゴロゴロと雪の上に転がっていて落石の多さを物語っていて、早く通過したい。

御田ケ原分岐から鳥海湖の南側を歩いてみる。途中にはハクサンイチゲの見事なお花畑があり撮影に時間を費やす。
鳥海湖から御浜に100m登り返すと草原になっていて涼風が心地よい。ニッコウキスゲもまだ咲いている。
御浜からは日中の日差しが照りつける中の下山で暑かった。鉾立には昼頃着。E氏はlこれから温泉に2泊してから栗駒山に行くそうだ。全く羨ましい。私はこのまま長野に向けての長いドライブだ。